第 5講 パリ条約の歴史と概要(2/2) PDF 

細川 学(2006年08月)

第2話パリ条約

パリ条約の全条文、ただし12条以下は項目のみ

第1条

  1. この条約が適用される国は、工業所有権の保護のために同盟を形成する。
  2. 工業所有権の保護は、特許、実用新案、意匠、商標、サービス・マーク、商号、原産地表示又は原産地名称及び不正競争防止に関するものとする。
  3. 工業所有権の語は、最も広義に解釈されるものとし、本来の工業及び商業のみならず、農業及び採取産業の分野並びに製造したもの又は天然のすべての産品(例えば、ぶどう酒、穀物、たばこの葉、果実、家畜、鉱物、鉱水、ビール、花、穀粉)についても用いられる。
  4. 特許には、輸入特許、改良特許、追加特許等の同盟国の法令によって認められる各種の特許が含まれる。

第2条

  1. 同盟国の国民は、工業所有権の保護に関し、この条約で特に定める権利を害されることなく、他のすべての同盟国において、当該他の同盟国の法令が内国民に対し現在与えており又は将来与えることがある利益を享受する。すなわち、同盟国の国民は、内国民に課せられる条件及び手続に従う限り、内国民と同一の保護を受け、かつ、自己の権利の侵害に対し内国民と同一の法律上の救済を与えられる。
  2. もっとも、各同盟国の国民が工業所有権を享受するためには、保護が請求される国に住所又は営業所を有することを条件とされることはない。
  3. 司法上及び行政上の手続並びに裁判管轄権については、並びに工業所有権に関する法令上必要とされる住所の選定又は代理人の選定については、各同盟国の法令の定めるところによる。

第3条

  1. 同盟国に属さない国の国民であって、いずれかの同盟国の領域内に住所又は現実かつ真正の工業上若しくは商業上の営業所を有するものは、同盟国の国民とみなす。

第4条

    1. いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案、意匠若しくは商標の登録出願をした者又はその承継者は、他の同盟国に出願することに関し、いかに定める期間中優先権を有する。
    2. 各同盟国の国内法令又は同盟国間で締結された二国間若しくは多国間の条約により正規の国内出願とされるすべての出願は、優先権を生じさせるものと認められる。
    3. 正規の国内出願とは、結果のいかんを問わず、当該国に出願した日付を確定するために十分なすべての出願をいう。
    1. すなわち、A(1)に規定する期間の満了前に他の同盟国においてなされた後の出願は、その間に行われた行為、例えば、他の特許出願、当該発明の公表又は実施、当該意匠に係る物品の販売、当該商標の使用等によって不利な取扱いを受けないものとして、また、これらの行為は、第三者のいかなる権利又は使用の機能をも生じさせない。優先権の基礎となる最初の出願の日前に第3者が取得した権利に関しては、各同盟国の国内法令の定めるところによる。
    1. A(1)に規定する優先期間は、特許及び実用新案については12箇月、意匠及び商標については6ヶ月とする。
    2. 優先期間は、最初の出願の日から開始する。出願の日は期間に参入しない。
    3. 優先期間は、その末日が保護の請求される国において法定の休日又は所轄庁が出願を受領するために開いていない日にあたるときは、その日の後の最初の就業日まで延長される。
    4. (2)にいう最初の出願と同一の対象について同一の同盟国においてされた後の出願は、先の出願が、公衆の閲覧に付されないで、かつ、いかなる権利をも存続させないで、後の出願の日までに取り下げられ、放棄され又は拒絶の処分を受けたこと、及びその先の出願がまだ優先権の基礎とされないことを条件として、最初の出願とみなされ、その出願日は、優先期間の初日とされる。この場合において、先の出願は、優先権の主張の基礎とすることができない。
    1. 最初の出願に基づいて優先権を主張しようとする者は、出願の日付及びその出願がされた同盟国の国名を明示した申立てをしなければならない。各同盟国は、遅くともいつまでにその申立てをしなければならないかを定める。
    2. (1)の日付及び国名は、権限のある官庁が発行する刊行物(特に特許及びその明細書に関するもの)に掲載する。
    3. 同盟国は、優先権の申立てをする者に対し、最初の出願に係る出願書類(明細書、図面等を含む)の謄本を要求することができる。最初の出願を受理した主管庁が認証した謄本は、いかなる公証をも必要とせず、また、いかなる場合にも、後の出願の日から3箇月の期間内においてはいつでも、無料で提出することができる。その謄本には、その主管庁が交付する出願の日付を証明する書面及び訳文を添付するよう要求することができる。
    4. 出願の際には、優先権の申立てにについての他の手続を要求することができない。各同盟国は、この条に定める手続がされなかった場合の効果を定める。ただし、その効果は優先権の喪失を限度とする。
    5. 出願の後においては、他の証拠書類を要求することができる。最初の出願に基づいて優先権を主張する者は、その最初の出願の番号を明示するものとし、その番号は、(2)に定める方法で公表される。E(1)いずれかの同盟国において実用新案要録出願に基づく優先権を主張して意匠登録出願をした場合には、優先期間は,意匠について定められた優先期間とする。(2)なお、いずれの同盟国においても、特許出願に基づく優先権を主張して実用新案登録出願をすることができるものとし、また、実用新案登録出願に基づく優先権を主張して特許出願をすることができる。
    1. いずれの同盟国も、特許出願人が二以上の優先権(二以上の国においてされた出願に基づくものを含む)を主張することを理由として又は優先権を主張して行った特許出願が優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかった構成部分を含むことを理由として、当該優先権を否認し、又は当該特許出願について拒絶の処分をすることができない。ただし、当該同盟国の法令上発明の単一性がある場合に限る。優先権の主張の基礎となる出願に含まれていなかった構成部分については、通常の条件に従い、後の出願が優先権を生じさせる。
    1. 審査により特許出願が複合的であることが明らかになった場合には、特許出願人は、その特許出願を二以上の出願に分割することができる。この場合において、特許出願人は、その分割された各出願の日付としてもとの出願の日付を用い、優先権の利益があるときは、これを保有する。
    2. 特許出願人は、また、自己の発意により、特許出願を分割することができる。この場合においても、特許出願人は、その分割された各出願の日付としてもとの出願の日付を用い、優先権の利益があるときは、これを保有する。各同盟国は、その分割を認める場合の条件を定めることができる。
    1. 優先権は、発明の構成部分で当該優先権の主張に係るものが最初の出願において請求の範囲内のもととして記載されていないことを理由としては、否認することができない。ただし、最初の出願に係る出願書類の全体により当該構成部分が明らかにされている場合に限る。
    1. 出願人が自己の選択により特許又は発明者証いずれかの出願をすることができる同盟国においてなされた発明者証の出願は、特許出願の場合と同一の条件でこの条に定める優先権を生じさせるものとし、その優先権は、特許出願の場合と同一の効果を有する。
    2. 出願人が自己の選択により特許又は発明者証のいずれの出願をすることができる同盟国においては、発明者証の出願人は、特許出願において適用されるこの条の規定に従い、特許出願、実用新案登録出願又は発明者証の出願に基づく優先権の利益を享受する。

第4条の2

  1. 同盟国の国民が各同盟国において出願した特許は、他の同盟国(同盟であるかどうかを問わない)において同一の発明について取得した特許から独立した物とする。
  2. (1)の規定は、絶対的な意味に、特に、優先期間中に出願された特許が、無効又は消滅の理由についても、また、通常の存続期間についても、独立のものであると解釈しなければならない。
  3. (1)の規定は、その効力の発生の際に存するすべての特許について適用する。
  4. (1)の規定は、新たに加入する国がある場合にはその加入の際に加入国又は他の国に存する特許についても、同様に適用する。
  5. 優先権の利益により取得された特許については、各同盟国において、優先権の利益なしに特許出願され又は特許が与えられた場合に認められる存続期間と同一の存続期間が認められる。

第4条の3

  1. 発明者は、発明者証に発明者として記載される権利を有する。

第4条の4

  1. 特許の対象である物の販売又は特許の対象である方法によって生産される物の販売が国内法令上の制限を受けることを理由としては、特許を拒絶し又は無効とすることができない。

第5条

    1. 特許は、特許権者がその特許を取得した国にいずれかの同盟国で製造されたその特許に係る物を輸入する場合においても、効力を失わない。
    2. 各同盟国は、特許に基づき排他的権利の行使から生じることがある弊害、例えば、実施がされないことを防止するため、実施権の強制的設定について規定する立法措置をすることができる。
    3. (2)に規定する弊害を防止するために実施権の強制的設定では十分でない場合に限り、特許の効力を失わせることについて規定することができる。特許権の消滅又は特許権の取消しのための手続は、実施権の最初の強制的設定の日から2年の期間が満了する前には、することができない。
    4. 実施権の強制的設定は、実施がされず又は実施が十分でないことを理由としては、特許出願の日から4年の期間又は特許が与えられた日から3年の期間のうちいずれか遅く満了するものが満了する前には、請求することができないものとし、また、特許権者がその不作為につきそれが正当であることを明らかにした場合には、拒絶される。強制的に設定された実施権は、排他的なものであってはならないものとし、また、企業又は営業の構成部分のうち当該実施権の行使に係るものとともに移転する場合を除くほか、当該実施権に基づく実施権の許諾の形式によっても、移転することができない。
    5. (1)から(4)までの規定は、実用新案に準用する。
    1. 意匠の保護は、当該意匠の実施をしていないことにより又は保護される意匠に係る物品を輸入することによっては、失われない。
    1. 登録商標について使用を義務づけている同盟国においては、相当の猶予期間が経過しており、かつ、当事者がその不作為につきそれが正当であることを明らかにしない場合にのみ、当該商標の登録の効力を失わせることができる。
    2. 商標の所有者が一の同盟国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えることなく構成部分に変更を加えてその商標を使用する場合には、その商標の登録の効果は、失われず、また、その商標に対して与えられる保護は、縮減されない。
    3. 保護が賀要求される国の国内法令により商標の共有者と認められる二以上の工業上又は商業

第5条の2

  1. (1)工業所有権の存続のために定められる料金の納付については、少なくとも6箇月の猶予期間が認められる。ただし、国内法令が割増金を納付すべきことを定めている場合には、それが納付されることを条件とする。
  2. 同盟国は、料金の不納により効力を失った特許の回復について定めることができる。

第5条の3

  1. 次のことは、各同盟国において、特許権の権利を侵害するものとは認められない。
    1. 1.当該同盟国の領水に他の同盟国の船舶が一時的に又は偶発的に入った場合に、その船舶及び機械、器具、装備その他の附属物に関する当該特許権者の特許の対象である発明を船舶内で専らその船舶の必要のために使用すること。
    2. 2.当該同盟国に他の同盟国の航空機又は車両が一時的に又は偶発的に入った場合に、その航空機又は車両又はその附属物の構造又は機能に関する当該特許権者の特許の対象である発明を使用すること。

第5条の4

  1. ある物の製造方法について特許が取得されている同盟国にその物が輸入されている場合には、特許権者は、輸入国で製造されたものに関して当該特許に基づきその国の法令によって与えられるすべての権利を、その輸入物に関して享受する。

第5条の5

  1. 意匠はすべての同盟国において保護される。

第6条

  1. 商標の登録出願及び登録の要件は、各同盟国において国内法令で定める。
  2. もっとも、同盟国の国民がいずれかの同盟国において登録出願をした商標については、本国において登録出願、登録又は存続期間の更新がされなかったことを理由として登録が拒絶され又は無効とされることはない。
  3. いずれかの同盟国において正規に登録された商標は、他の同盟国(本国を含む)において登録された商標から独立したものとする。

第6条の2

  1. 同盟国は、一の商標が、他の一の商標でこの条約の利益を受ける者の商標としてかつ同一若しくは類似の商品について使用されるものとしてその同盟国において広く認識されているとその権限のある当局の認めるものの複製である場合又は当該他の商標と混同を生じさせやすい模倣若しくは翻訳である場合には、その同盟国の法令が許すときは職権をもって、又は利害関係人の請求により、当該一の商標の登録を拒絶し又は無効とし、及びその使用を禁止することを約束する。一の商標の要部が、そのような広く認識されている他の一の商標の複製である場合又は当該他の一の商標と混同を生じやすい模倣である場合も、同様とする。
  2. (1)に規定する商標の登録を無効とすることの請求については、登録の日から少なくとも5年の期間を認めなければならない。同盟国は、そのような商標の使用の禁止を請求することができる期間を定めることができる。
  3. 悪意で登録を受け又は使用された商標の登録を無効とし又は使用を禁止することの請求については、期間を定めないものとする。

第6条の3

    1. 同盟国は、同盟国の紋章、旗章その他の記章、同盟国が採用する監督用及び証明用の公の記号及び印章並びに紋章学上これらの模倣と認められるものの商標又はその構成部分としての登録を拒絶し又は無効とし、また、権限のある官庁の許可を受けずにこれらの商標又はその構成部分としての使用することを適当な方法で禁止する。
    2. (a)の規定は、一又は二以上の同盟国が加盟している政府間国際機関の紋章、旗章その他の記章、略称及び名称についても同様に適用する。ただし、既に保護を保障するための現行の国際協定の対象となっている紋章、旗章その他の記章、略称及び名称については、この限りでない。
    3. いずれの同盟国も、この条約がその同盟国において効力を生じる前に善意で取得した権利の所有者の利益を害して(b)の規定を適用することを要しない。(a)に規定する使用又は登録が、当該国際機関と当該紋章、旗章その他の記章、略称及び名称との間に関係があると公衆に暗示するようなものでない場合又は当該使用者と当該国際機関との間に関係があると公衆に誤って信じさせるようなものでない場合には、同盟国は、(b)の規定を適用することを要しない。
  1. 監督用及び証明用の公の記号及び印章の禁止に関する規定は、当該記号又は印章を含む商標が当該記号又は印章の用いられている商品と同一又は類似の商品にといて使用されているものである場合に限り、適用する。
    1. (1)及び(2)の規定を適用するため、同盟国は、国の記章並びに監督用及び証明用の公の記号及び印章であって各国が絶対的に又は一定の限度までこの条の規定に基づく保護の下におくことを現に求めており又は将来求めることがあるものの一覧並びにこの一覧表に加えられるその後のすべての変更を、国際事務局を通じて、相互に通知することに同意する。各同盟国は、通知された一覧表を適宜公衆の閲覧に供する。もっとも、その通知は、国の旗章に関しては義務的でない。
    2. (1)(b)の規定は、政府間国際機関が国際事務局を通じて同盟国に通知した当該国際機関の紋章、旗章その他の記章、略称及び名称についてのみ適用する。(4)同盟国は、異議がある場合には、(2)の通知を受領した時から12箇月の期間内においては、その異議を国際事務局を通じて関係国又は関係政府間国際機関に通報することができる。(5)(1)の規定は、国の旗章に関しては、1925年11月6日の後に登録される商標についてのみ適用する。
  2. 前記の諸規定は、同盟国の記章(旗章を除く)、公の記号及び印章並びに政府間国際機関の紋章、旗章その他の記章及び印章、略称及び名称に関しては、(3)の通知を受領した時から2箇月を経過した後に登録される商標についてのみ適用する。
  3. 同盟国は、国の記章、記号又は印章を含む商標で1925年11月6日の後に登録される商標についても、その登録出願が悪意でされた場合には、当該登録を無効とすることができる。
  4. 各同盟国の国民であって自国の記章、記号又は印章の使用を許可されたものは、当該記章、記号又は印章が他の同盟国の国の記章、記号又は印章と類似するものである場合にも、それを使用することができる。
  5. 同盟国は、他の同盟国の紋章については、その使用が商品の原産地の誤認を生じさせるものである場合には、許可を受けないで取引においてその紋章を使用することを禁止することを約束する。
  6. 前記の諸規定は、各同盟国が国の紋章、旗章その他の記章、同盟国により採用された公の記号及び印章並びに(1)に規定する政府間国際機関の識別記号を許可を受けないで使用している商標につき、第6条の5B3の規定に基づいてその登録を拒絶し又は無効とすることを妨げない。

第6条の4

  1. 商標の譲渡が、同盟国の法令により、その商標が属する企業又は営業所の移転と同時に行われるときのみ有効とされている場合において、商標の譲渡が有効と認められるためには、譲渡された商標を付した商品を当該同盟国において製造し又は販売する排他的権利とともに、企業又は営業所の構成部分であって当該同盟国に存在するものを譲受人に移転すれば足りる。
  2. (1)の規定は、譲受人による商標の使用が、当該商標を付した商品の原産地、性質、品位等について事実上公衆を誤らせるものである場合に、その商標の譲渡を有効と認める義務を同盟国に課すものではない。

第6条の5

    1. 本国において正規に登録された商標は、この条で特に規定する場合を除くほか、他の同盟国においても、そのままその登録を認められかつ保護される。当該他の同盟国は、確定的な登録をする前に、本国にある登録の証明書で権限のある当局が交付したものを提出させることができる。その証明書には、いかなる公証をも必要としない。
    2. 本国とは、出願人が同盟国に現実かつ真正の工業上又は商業上の営業所を有する場合にはその同盟国を、出願人が同盟国にそのような営業所を有しない場合にはその住所がある同盟国を、出願人が同盟国の国民であって同盟国に住所を有しない場合にはその国籍のある国をいう。
  1. この条に規定する商標は、次の場合を除くほか、その登録を拒絶され又は無効とされることはない。もつとも、第10条の2<不正競争>の規定は、妨げられない。
    1. 当該商標が、保護が要求される国における第3者の既得権を害するようなものである場合
    2. 当該商標が識別性を有しないものである場合又は商品の種類、品質、数量、用途、価格、原産地若しくは生産の時期を示すため取引上使用されることがある記号若しくは表示のみをもって、若しくは保護が要求される国の取引上の通用語において若しくはその国の公正なかつ確立した商習慣において常用されるようになっている記号若しくは表示のみをもって構成されるものである場合
    3. 当該商標が、道徳又は公の秩序に反するもの、特に、公衆を欺くようなものである場合。ただし、商標に関する法令の規定(公の秩序に関するものを除く)に適合しないことを唯一の理由として、当該商標を公の秩序に反すると認めてはならない。
    1. 商標が保護を受けるに適したものであるかどうかを判断するに当たっては、すべての事情、特に、当該商標が使用されてきた期間を考慮しなければならない。
    2. (2)本国において保護されている商標の構成部分に変更を加えた商標は、その変更が、本国において登録された際の形態における商標の識別性に影響を与えず、かつ、商標の同一性損なわない場合には、他の同盟国において、その変更を唯一の理由として登録を拒絶されることはない。
  2. いかなる者も、保護を要求している商標が本国において登録されていない場合には、この条の規定による利益を受けることができない。
  3. もっとも、いかなる場合にも、本国における商標の登録の更新は、その商標が登録された他の同盟国における登録の更新の義務を生じさせるものではない。
  4. 第4条に定める優先期間内にされた商標の登録は、本国における登録が当該優先期間の満了後にされた場合にも、優先権の利益は失わない。

第6条の6

  1. 同盟国は、サービスマークを保護することを約束する。同盟国は、サービスマークの登録について規定を設けることを要しない。

第6条の7

  1. 同盟国において商標に係る権利を有する者の代理人又は代表者が、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないで、一又は二以上の同盟国においてその商標について自己の名義による登録をした場合は、登録異議の申立てをし、又は登録を無効とすること若しくは、その国の法令が認めるときは、登録を自己に移転することを請求することができる。ただし、その代理人又は代表者がその行為につきそれが正当であることを明らかにしたときは、この限りでない。
  2. 商標に係る権利を有する者は、(1)に規定に従うことを条件として、その許諾を得ないでその代理人又は代表者が商標を使用することを阻止する権利を有する。
  3. 商標に係る権利を有する者がこの条に定める権利を行使することができる相当の期間は、国内法令で定めることができる。

第7条

  1. いかなる場合にも、商品の性質は、その商品について使用される商標が登録されることについて妨げとはならない。

第7条の2

  1. 同盟国は、その存在が本国の法令に反しない団体に属する団体商標の登録を認めかつ保護することを約束する。その団体が工業上又は商業上の営業所を有しない場合も、同様とする。
  2. 各同盟国は、団体商標の保護について特別の条件を定めることができるものとし、また、公共の利益に反する団体商標についてはその保護を拒絶することができる。
  3. もっとも、その存在が本国の法令に反しない団体に対しては、保護が要求される同盟国において設立されていないこと又は保護が要求させる同盟国の法令に適合して構成されていないことを理由としては、その団体に属する団体商標をの保護を拒絶することができない。

第8条

  1. 商号は、商標の一部であるかどうかを問わず、すべての同盟国で保護されるものとし、そのためには、登録の申請又は登記が行われていることを必要としない。

第9条

  1. 不法に商標又は商号を付した産品は、その商標又は商号について法律上の保護を受ける権利を認められている同盟国に輸入される際に差し押さえられる。
  2. 差押は、また、産品に不法に商標又は商号を付する行為が行われた同盟国又はその産品が輸入された同盟国の国内においても行われる。
  3. 差押は、検察官その他権限のある当局又は利害関係人(自然人であるか法人であるかを問わない)の請求により、同盟国の国内法令に従って行われる。
  4. 当局は、通過の場合には、差押えを行うことを要しない。
  5. 同盟国の法令が輸入の際における差押えを認めていない場合には、その差押えの代わりに、輸入禁止又は国内における差押えが行われる。
  6. 同盟国の法令が輸入の際における差押え、輸入禁止及び国内における差押えを認めていない場合には、その法令が必要な修正を行うまでの間、これらの措置の代わりに、その同盟国の法令が同様の場合に内国民に保障する訴訟その他の手続が、認められる。

第10条

  1. 前条の規定は、産品の原産地又は生産者、製造者若しくは販売人に関し直接又は間接に虚偽の表示が行われる場合についても適用する。
  2. (1)の産品の生産、製造又は販売に従事する生産者、製造者又は販売者であって、原産地として偽って表示されている土地、その土地の所在する地方、原産国として偽って表示されている国又は原産地の虚偽の表示が行われている国に住所を有する者は、自然人であるか法人であるかを問わず、すべての場合における利害関係人と認める。

第10条の2

  1. 各同盟国は、同盟国の国民を不正競争から有効に保護する。
  2. 工業上又は商業上の公正な習慣に反するすべての競争行為は、不正競争行為を構成する。
  3. 特に、次の行為、主張及び表示は、禁止される。
    1. いかなる方法によるかを問わず、競争者の営業所、産品又は工業上若しくは商業上の活動と混同を生じさせるようなすべての行為
    2. 2.競争者の営業所、産品又は工業上若しくは営業上活動に関する信用を害するような取引上の虚偽に主張
    3. 産品の性質、製造方法、特徴、用途又は数量について公衆を誤らせるような取引上の表示及び主張

第10条の3

  1. 同盟国は、第9条から前条までに規定するすべての行為を有効に防止するために適当な法律上の救済手段を他の同盟国の国民に与えることを約束する。
  2. 同盟国は、更に、利害関係を有する生産者、製造者又は販売人を代表する組合又は団体でその存在が本国の法令に反しないものが、保護が要求される同盟国の法令により国内の法令により国内の組合又は団体に認められている限度において、第9条から前条までに規定する行為を防止するため司法的手続に訴え又は行政機関に申立てをすることができることとなるように措置を講ずることを約束する。

第11条

  1. 同盟国は、いずれかの同盟国の領域内で開催される公の又は公に認められた国際博覧会に出品される産品に関し、国内法令に従い、特許を受けることができる発明、実用新案、意匠又は商標に仮保護を与える。
  2. (1)の仮保護は、第4条に定める優先期間を延長するものではない。後に優先権が主張された場合には、各同盟国の主管庁は、その産品を博覧会に搬入した日から優先期間が開始するものとすることができる。
  3. 各同盟国は、当該産品が展示された事実及び搬入の日付を証明するために必要と認める証拠書類を要求することができる。

第12条 保護官庁の設置、省略

第13条 総会、省略

第14条 執行委員会、省略

第15条 国際事務局、省略

第16条 予算、省略

第17条 条約修正提案、省略

第18条 同

第19条 同盟国間の特別取り決め、省略

第20条 改正条約、省略

第21条 非同盟国の改正条約への加盟、省略

第22条 批准又は加盟に効力、省略

第23条 改正条約の発効後は従前の改正条約に加盟できない、省略

第24条 属領、省略

第25条 保護の約束、省略

第26条 無期限効力、省略

第27条 改正条約が元パリ条約に代わる、省略

第28条 紛争解決、省略

第29条 改正条約の署名及び寄託、省略

第30条 改正条約の事務局、省略