第 6講 知的財産権に関係する他の法律及び条約(3/5) PDF

細川 学(2006年08月) 

第3話 特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)

PCTとはどんな条約ですか?

  1. PCTは1970年にワシントンで調印され、1978年1月に発効したパリ条約を補完する条約です。パリ条約では審査主義も無審査主義も容認されており、審査主義を採用している国の間では同一出願人の同じ発明を各国がそれぞれ別々に審査するため、審査業務が重複することになっていました。一方、出願人も優先期間(1年)内に各国のルールに沿って、それぞれの国の言語でそれぞれの国に出願しなければならないため、そのための費用と労力は大変なものでした。こうした状況を打開し、出願人も各国の特許庁も便利になる方法として取決められたのがPCTです。すでに加盟国は100ヶ国以上になっています。
  2. PCTの原本(正文)は英語とフランス語で書かれています。それ以外にスペイン語、ドイツ語、日本語、ポルトガル語、ロシア語等の公定訳文が用意されています。
  3. PCTの主な制度と規定は次の通りです。
    1. 国際出願制度:国際出願の方式に準拠した国際出願をある国に出願すると、多数国に出願したことと同じ効果をもつ制度(3条他)
    2. 国際審査制度:国際調査機関が国際出願に係る発明の先行技術を調査する制度(15条他)
    3. 国際公開制度:国際事務局が、国際出願日が認められた国際出願を、優先日から原則として18ヶ月を経過した後にその出願内容を公開する制度(21条)
    4. 国際予備審査制度:国際予備審査機関が、その発明の新規性、進歩性、産業上の有用性について拘束力は持たない予備的な調査をする制度(第2章)
    5. 技術情報提供業務:国際事務局が、開発途上国のために、公表された特許及び関係情報を提供する業務(50条)
    6. 技術援助:開発途上国の特許制度の発展を目的とする技術援助をする(51条)
  4. なお、PCTの対象は特許のみで、意匠、商標その他の知的財産は含まれていません。
  5. また日本で国際出願の受理、国際調査及び国際予備調査を行うのは特許庁です。
  6. さらに日本の特許法には、PCTの施行に伴い第9章「特許協力条約に基づく国際出願に係る特例」が設けられました。詳細は第7講「特許法」で説明します。