第 2講 知的財産権の概要(2/3) PDF

細川 学(2006年08月)  

第2話 著作権の概要

著作権と工業所有権の関係はどうなっていますか

  1. 著作権については、ここでは概要だけを説明します。詳しくは第12講で説明します。コンピュータプログラムに関するプロパテントの潮流は1970年代のコンピュータ基本ソフト(OS=Operating Software)の不正互換製品の排除問題が出発点であると言われています。その頃の各国の特許法はコンピュータプログラムの保護が不十分でした。日本でもコンピュータプログラムは特許法の保護対象(自然法則を利用した技術的思想の創作)とはされませんでした。
  2. そこで米国では著作権で保護する法令が制定され、日本でも大激論の末1986年に著作権法を改正し、コンピュータプログラムも著作権法で保護されることになりました。この著作権法改正により著作権が産業分野に関わりを持つようになりました。
  3. また日本の特許法も、著作権法改正後、ソフトウェアを書き込んだCD等の記憶手段を媒体と称し、媒体特許として特許法の保護対象にしました。現在は自然法則を利用するソフトウェアは特許法の保護対象になっています。
  4. つまり、現在、ソフトウェアは特許法と著作権法の両方の保護対象になっていますが、その内容は異なっています。特許権は出願⇒ 公開⇒ 審査⇒ 設定登録の順の手続により発生し、権利期間は出願後20年です。一方、著作権は登録申請および著作した事実により権利が発生し、その保護期間は著作者の死後又は創作を公表後50年(2004年4月1日から70年)です。なお、それ以外にも、それぞれに特徴があり、ソフトウェアについては、詳しくは後述する通り、その内容によってどのような権利を取得するかを決める必要があります。

著作権の大分類

著作権の詳細分類

営業秘密とは何のことですか

秘密(Trade Secret)は知的財産権の一つで、企業などが秘密にしようとしている製造技術、新製品の製造ノウハウ、設計図、実験データなどの技術情報や顧客名簿、販売マニュアル、新製品販売日などがそれに当たります。しかし、日本では特許法や著作権法により権利を与えて保護する対象ではなく、歴史的な経緯から不正競争防止法の改正により、下記示すように一定の要件を満たすものが営業秘密として、権利は付与されないが、保護の対象になっています。
  • 営業秘密の要件
    • 秘密として管理されていること(情報の機密管理)
    • 生産方法、販売方法等の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
    • 一般に知られてないこと(非公知性)
  • 営業秘密は不正競争防止法により保護されている。ただし、不正競争防止法は権利を付与する法律ではなく、競争秩序維持法ですので、営業秘密権といった排他的独占権を登録するようにはなっていません。
  • 営業秘密はパリ条約1第10条の2の規定<ヘーグ改正規定、昭和10年(1935年)>「工業上又は商業上の公平な慣習に反するすべての競争行為」の批准に当り、昭和9年(1934年)に改正され、その後、何回もの改正が繰り返されています。2005年にも改正が行われています。
  • 営業秘密はノウハウとは概念が違う言葉ですが、①と⑤を比較すると分かる通り、重複した意味を含んでおり、いずれにしても特許法、著作権法あるいは不正競争防止法でカバーされることになっています。ただし、日本の不正競争防止法に基づく営業秘密に関する罰則や消滅時効等は欧米諸外国の法令とはかなり異なっているので注意する必要があります。
  • ノウハウの定義
    • 工業所有権関係部署………産業上利用できる技術的秘訣(上手い方法)
    • 国際商業会議所………単独又は結合して、工業目的に役立つある種の技術を完成するもしくはそれを実際に適用するのに必要な秘密の技術的知識と経験、又はそれらの集積をいう
    • AIPPI………技術的、商業的、管理的、財政的もしくはその他の性格の知識及び経験であって、企業の経験あるいは専門業務の実施に適用し得るものである
    • 日本弁護士連合会の営業秘密の定義………経済的に価値のある当該営業体に固有な情報であって、秘密であるもの
    • コンピュータ・プログラムは著作権法、特許法により権利が付与されて保護される対象となっている。営業秘密でもあるので、不正競争防止法でも権利は付与されないが、保護の対象になっている。