印刷 文化と文明の関わり(9/11)PDF

元凸版印刷株式会社 河野 通

印刷インキ・関連技術の多様化

印刷インキの要素材料

顔料 色彩をもち,水その他の溶剤に溶けない微粉末。塗料・化粧料・着色料に用いる。チタン白・ベ ンガラ・クロムイエローなどの無機顔料とレーキ顔料などの有機顔料がある。
染料 色をもつ有機化合物で,水や有機溶媒に溶かして,繊維製品や皮革・紙などを染色する物質。
填料 紙の平滑度・白色度・印刷適性などを高めるためにパルプに添加する無機顔料)
ベヒクル ビヒクル:vehicle:着色剤。塗料・印刷インクなどの成分の一で、各成分を均質に分散展開させて物体の表面に固着させるための媒体。乾性油・樹脂・溶剤など
乾性油 空気にふれると酸化されてかわき,固まる性質をもつ油

溶剤

水・アルコール・炭化水素系有機溶剤

添加剤

硬化剤・分散剤・安定剤・柔軟剤

乾燥方式

浸透・蒸発・加熱・冷却・酸化重合・反応硬化・UV(紫外線)硬化・EB(電子ビーム硬化)

印刷技術の4大構成要素

  1. PATTERNING
  2. COATING
  3. LAMINATING
  4. COLOR MANAGEMENT

物理化学電子科学の境界領域技術

カラーマネジメントとは、情報を入出力する装置・機器(モニター、プリンター、デジタルカメラ、スキャナーなど)によって表現される色が左右さてしまう状態を補正し、同一データであれば同一の色が再現されるよう調整すること。

版式毎の特徴と応用

版式 インキタイプ インキ厚(ミクロン) 応用
平板(オフセット・リトグラフ) 粘性 2~5 文字、写真、粗面、曲面
凸版(フレキソ・活版) 液状 2~10 軟質素材、粗面
凹版(エッチング) 粘性 10~100 厚膜、精密
凹版(グラビヤ) 液状 5~30 写真、多様な素材
スクリーン 粘性 30~100 厚膜、多様な素材、曲面
インクジェット 液状 1~20 写真、精密画像

印刷技術の応用で開拓された新分野
一升瓶から紙容器へ

特徴

  1. 割れにくい
  2. 小さい容積半分
  3. 軽い重量半分
  4. 味が変わりにくい安心
  5. 奇麗自由にデザインできる

紙容器の材料の構成

印刷産業論

  • 受注型産業(産業が出来たときからMarket In)
  • 多種大量生産型産業
  • 日本では少数の大企業 vs Many 中小企業
  • 内需型産業

印刷産業が日本の製造業に占める規模(平成15年工業統計表による)

従業員の最も多いのは食品116万人、印刷産業は機械、輸送機器、電気機械、電子部品に次ぐ規模で39万人である。

印刷産業の規模別構成比(平成15年工業統計表による)

企業数(事業数)ではわずか0.2%、従業員数でも9.4%の大企業が出荷額の24.5%の出荷額を占めている。特に2大企業、凸版印刷、大日本印刷が飛び抜けている。上場企業は29社あるが、1000億以上の売り上げ会社は4社しかない。

なお、2005年の推計では印刷産業の出荷額は合計で8兆8520億円、従業員数は393221人、事業所数は34940事業所で、1991年から2003年の間に、特に1996年から製版業界(プリプレス)はデジタル化の波に洗われ、出荷額は30%減、事業所数は実に47%減となった。米国で1990年代初めに起こった変化が日本にも及んでいる。

印刷方式別生産高(2005年 印産連資料)