第22講 ボールスプライン軸受事件最高裁 PDF
細川 学(2006年11月)
はじめに
ボールスプライン軸受事件最高裁判決は「均等論」について正面から向き合った画期的な判決です。この判例はプロパテントであるとする意見が大勢ですが、反対意見もあります。従来は本件特許発明とイ号との比較は出願時で判断していましたが、本件最高裁判決は「製造時に置換容易」とし、判断の次期を繰り下げました。この繰り下げによりこの間の技術進歩により「均等」の範囲が拡大する例もあります。反面、技術進歩により「作用効果の同一性」や「推考容易」も稀釈化が起こります。均等の範囲が拡大するとは限りません。
布井要太郎弁護士は判例時報1907号(平成17年12月11号)に、「クレーム解釈における契約説と法規範説―均等論および禁反言との関連において」を発表されました。氏は、クレーム解釈には「契約説」(米国)と「法規範説」(独)があり、両国(米、独)の実務(均等と法規範)を並存して採用した「無限摺動用ボールスプライン軸受」事件最高裁判決(最三判決、平10.2.24)は、法理論的観点から再検討の必要に迫られる、と論じています。
添付の参考図1、2及び別講の「均等論に関する新たなアプローチ」では、日・米・独の「均等論」について検討しましたので参照してください。
最高裁判決要旨
均等論における特許発明の技術的範囲の解釈方法