時空の漂白 35  PDF (2010年12月6日) 

広島便り 2010里山を歩こう(5)身近な自然観察  高橋 滋  

 

佐伯のダイミョウセセリ(大名挵) 5月14日(金) 

佐伯の花上はながみの小屋は、この一週間あまりの良い天気で、一挙に濃い緑に包まれていた。春先の花は姿を消していた。

スノキ(酢の木)の花が咲いていた。ブルーベリーと同じ仲間のツツジ科のスノキ属。花の姿も、8月頃になる実も似ている。 

しかし、スノキの実の付き方がまばらなので、同じツツジ科スノキ属でもナツハゼ(夏櫨)の実がなるのを待つ人の方が多いように思う。 

春先から、ヤマガラ(山雀)とシジュウカラが巣を争っていたが、巣箱に首を突っ込んでいたのはシジュウカラ(四十雀)で、ついに勝負にはシジュウカラが勝ったようだった。

瞬間のことで1枚しか撮れなかったが、ダイミョウセセリ(大名挵)の写真を撮ることができた。ピントが合っていた。セセリにしては美しい色合いで、この色彩を持つ蝶は少ないと思う。

 

なお、「せせ・る」(挵る)とは、「とがったもので繰り返しつつく。つついてほじくる。」といった意味で、「楊枝で歯をせせる」といったように使う。蝶の触角の先は、普通は棍棒状だが、それが尖っていたりするところから付けられた名前なのだろうか?。

セセリ蝶の仲間は体が太く、はねが短く、しかも色も地味なものが多いことからいわゆるに間違われることが多い。もっとも蝶と蛾との違いは厳密に言うと極めて難しく、分けないのが正解のようなのだが…………。

湯来町から東郷山
       5月15日(土)

佐伯の花上(左地図の左隅の印)の小屋は山の中であり、今年は月1回、人里の湯来町の和田というところ、湯の山温泉の近く(左地図の左上部)で、地元の野菜作りを手伝っている。

午前中の仕事(昼飯付き)なので、午後、東郷山(左地図の右中部)の方に行ってみた。山には入れなかったが、いろいろ植物などの観察ができた。

まずはシソ(紫蘇)科の多年生草本のラショウモンカズラ(羅生門葛)である。物々しい名前は、長さが4、5センチにもなる花の形を、京都の羅生門で渡辺綱が鬼退治した時に切り落とした腕に見立てたのだという。

次は、この季節から多く見る白い花である。後で調べてハイノキ(灰の木)と特定した常緑中低木である。

植物だけではない。蝶もいた。暫くみていないトラフシジミ(虎斑小灰蝶)も飛んで来た。とっさのことでピントが合わなかった。「尾状突起」(後翅の先の突起)もあり、波線の斑も入っていて、時期は早いものの、一瞬「ゼフィルスかな」と思わせた。

帰り道、市街地を流れる八幡川の河原で黄色い花の群生を見た。写真を撮って、戻って調べたらジャケツイバラ(蛇結茨)だった。枝がもつれながらくねっている様子を蛇が絡み合っている様子に見立てて名付けられたという。大きくて立派な花である。八幡川の河原には多いようだが、これまでハッキリと見た記憶はなかった。