時空の漂白 56  PDF (2011年3月11日)    

現代版 幸福考(6)                  原 恭三

「長生きの秘訣 左手の法則」 

 

ある程度の年齢になってくると、年末の喪中ハガキが多くなるが、今年は私の周囲で結構沢山の知人が亡くなった。その大半は癌である。

3年間の闘病生活の末、51歳になる奥さんを亡くされた近所のTさん、最後は、2人で貯めて建てた家を売ってでも何とかできないかと医者に相談したそうである。

また、癌の奥さんと9年間、2人で好きな海外旅行を重ねて闘病生活を過ごしたKさんは、今年、会社を早期退職して、1人で欧州の画家の歴史を訪ねている。

先日は、突然の悲報でてて弔電を打った九州の親戚、まだ58歳であった。

私自身も、数年前、義父を癌で亡くした時、A病院のB先生が良いとか、C治療法が良いとか、多くの友人からアドバイスを受け感謝したことがある。

その時、一番印象に残った治療法は、「左手の法則」と言うものであった。

これは、左手の5本指、つまり、

①子ども指は未来への「希望」
 ②薬指はその名の通り「健康」
 ③中指は中央で「力」
 ④人差し指は人と一緒に分かち合う「喜び」
 ⑤親指は親への「感謝」

を意味するというものである。

「君のお父さんは、今、健康(薬指)と力(中指)の2本の指を失っているが、まだ、残りの3本の指(希望、喜び、感謝)で元気に立つことが出来、立ち続けることで、時間とともに残りの2本指も立ってくるよ」という助言であった。

例えば、朝起きて、今日一日「希望」をもって、そして家族と一緒に朝食を取れる「喜び」を自覚し、粗末ながらも暖かい食事に「感謝」をすることが大切であるというものである。

つまり、日々の「希望と喜びと感謝」が、明日への活力となり、健康を盛り返し、そして、力が出てくるというものである。

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病気は、まず、り、冷え、しびれなどの感覚異常が起こり、次に、胸焼け、便秘、下痢などの機能障害が出て、最後に、潰瘍、ポリープという器質傷害へと発展すると言われる。

東洋医学では、病の原因は精神的ストレスが大きいと言われ、これを内因の七情の乱れ「怒、喜、思、憂、驚、悲、恐」という。これを防ぐためには、自らの精神を鍛え、適当な養生を行うことが長生きに通じる秘訣だそうだ。

健康には、肉体的なものと精神的なものとがある。肉体は34歳から35歳でピークであるが、精神は秩序的に磨いている限り、いくつになっても生きる限り発展と向上を続け決して老化しない。

しかし、最近、鬱病の前兆である不安神経症患者が急増している。厚生白書でも心の問題で精神科に通院する人が増加していることが分かる。

神経症の治療には、世界的にも評価されている日本で生まれた森田療法がある。これは日光の下で汗を流しながら野菜を作り、作物の成長に一喜一憂しながらその成長を喜ぶと言うものである。冷や汗しかかかない最近のサラリーマンにとって、日光の下での野良仕事は最高の健康法かもしれない。

また、最近、気になることはアルコール依存症患者が急増していることである。日本の飲酒人口は6000万人程度と言われるが、このうちアルコール依存症の患者は230万人と言われる。飲酒者の26人に1人がアルコール依存症という計算になり、精神疾患の中でも罹患率が高く、各人の性格や意志にかかわらず誰でもかかる可能性があるので気をつけたいものである。

これを外国の友人に話したところ、ワークホリックの次の日本人はアルコールホリックかと言われてしまった。

我々も、時々、左手の5本の指を見つめながら、まじめに自分の健康を考えたいものである。

原 恭三(はら・きょうぞう)
1954年生まれ。ペンシルバニア大学院・筑波大学院修了。
霞が関勤務 早稲田大学非常勤講師
日経品質文献賞、APIC論文賞等。
関心分野 Social Innovation CSR(企業社会的責任)