第 6講 知的財産権に関係する他の法律及び条約(1/5) PDF
細川 学(2006年08月)
第1話 関係法律の系統
知的財産関連法と憲法、民法等の国内法との関係はどうなっているのですか
- 日本の主な法律を大別すると、憲法、行政法、民法、商法、刑法、社会法、経済法、国際法及び民事・刑事訴訟法となります。
- 知的財産関連法は経済法の範疇に入りますが、私有財産と言う観点で憲法や民法・刑法訴訟法が深く係わっています。
- 知的財産はその大部分が世界共通の基準で保護されています。日本の知的財産関連法はほとんどパリ条約、ベルヌ条約等の国際条約と整合のとれたものとなっています。知的財産関連の主な国際条約は第5講のWIPOに掲載してあります。
なお、日本では2002年12月に「知的財産基本法」が制定されましたが、これは以下の通り、知的財産の創造・保護・活用に関する基本理念とその実現を図るための基本事項を定め、国、地方公共団体、大学、企業の責務を明らかにし、「推進計画」を策定し、「知的財産戦略本部」を設置し、これらを集中的かつ計画的に推進することを目的とするものであって、知的財産権の権利等の具体的な事項は、これでは定められてはいません。
第1条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、我が国産業の国際競争力の強化を図ることの必要性が増大している状況にかんがみ、新たな知的財産の創造及びその効果的な活用による付加価値の創出を基軸とする活力ある経済社会を実現するため、知的財産の創造、保護及び活用に関し、基本理念及びその実現を図るために基本となる事項を定め、国、地方公共団体、大学等及び事業者の責務を明らかにし、並びに知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の作成について定めるとともに、知的財産戦略本部を設置することにより、知的財産の創造、保護及び活用に関する施策を集中的かつ計画的に推進することを目的とする。
関係法令の系統
「権利」という観点で各法律を系統的に見ると下記のようになります
- 財産権は、これを侵してはならない。
- 財産権の内容は、公共の福祉に適合するように、法律でこれを定める。
- 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。
- 憲法第29条[財産権]
- 憲法第11条[基本的人権の享有]
- 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことができない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。
- 所有者ハ法令ノ制限内ニ於テ自由ニ其所有者ノ使用、収益及ビ処分ヲ為ス権利ヲ有ス。
- 故意叉ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因りテ生ジタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス
- 民法第206条[所有権の意義・内容]
- 民法第709条[不法行為の一般的要件・効果]
- 犯罪により害を被った者は、告訴をすることができる。
- 刑法第230条[告訴権者]
- 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
- 特許を受ける権利は、移転することができる。
- 特許権者は、業として特許発明を実施する権利を専有する。以下省略
- 特許権又は専用実施権を侵害した者は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処す。
- 特許法第29条[特許の要件]
- 特許法第33条
- 特許法第68条[特許権の効力]
- 特許法第196条[侵害の罪]
- 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。以下省略
- 商標法第25条[商標権の効力]
- 著作者は、著作者人格権(条文省略)及び著作権(条文省略)を享有する。
- 著作者人格権及び著作権の享有には、いかなる方式の履行をも要しない。
- 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処す。
- 著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者
- 営利を目的として、自動複製機器を著作権、出版権又は著作隣接権の侵害となる著作物又は実演等の複製に使用させた者
- 第119条及び第121条の二の罪は告訴をまって論ずる。
- 著作権法第17条[著作者の権利]
- 著作権に含まれる権利の種類[第3章]
- 複製権(第21条)、上演権及び演奏権(第22条)放送権、優先放送権等(第23条)、口述権(第24条)、展示権(第25条)上映権及び頒布権(第26条)貸与権(第26条の二)、翻訳権、翻案権等(第27条)、二次的著作物の利用に関する著作者の権利(第28条)、出版権、著作隣接権他
- 罰則[第7章]
- 第119条
- 第120条から第122条まで省略
- 第123条