第 6講 知的財産権に関係する他の法律及び条約(2/5) PDF
細川 学(2006年08月)
第2話 知的財産関連法に関係する国内法及び条約
知的財産関連法と民事訴訟法との関係はどうなっているのですか?
- 特許法、実用新案法、意匠法及び商標法では民事訴訟法の準用が多くあります。主な準用:a.証拠調べ、証拠保全(民訴913条から278条までの一部)、b.通訳の立会い(民訴154条)、c.調書(民訴160条)、d.再審(民訴3338条)他。
- 特許庁は行政府ですから人を裁くことはできません。特許権侵害行為、不法行為、信用を失墜させる行為、消費者を欺く行為等を裁き、罰則を適用するのは裁判所です。特許発明の技術的範囲の認定も裁判所です。(特許庁は判定のみ)
- また特許法は裁判所との関係も定められています。その主なものは、a.特許庁が行った特許取消決定叉は審決に関する訴えは東京高等裁判所の專轄とする(特許法178条)、b.書類の提出命令(特許法105条)、c.信用回復の措置(同106条)、特許庁または裁判所の手続の中断(同54条)等です。
- なお米国では1982年に特許庁の管轄化にある特許、意匠及び商標の事件専門の連邦控訴裁判所(CAFC)を開設しました。このCAFCにおいて特許権を広く解釈する判例が主流になり、米国でのプロパテントの法理が一気に加速しました。日本にも日本版CAFCを設立する動きがあります。現在は東京と大阪の裁判所に知的財産専門の部門を設け、充実する方向で対処しています。
国内法と条約や協定との関係はどうなっているのですか?
- 日本の知的財産関連法は基本的には国際条約や協定の強制条項に準拠しており、裁量条項は関連国内法等を含めて対応しています。特許、実用新案、意匠及び商標はパリ条約、マドリッド協定等に、著作権はベルヌ条約等にそれぞれ準拠しています。
- その他に特許、実用新案には「特許協力条約」があり、特許法に「特許協力条約に基づく国際出願に係る特例」があります。商標に関する「マドリッド協定の議定書」に対しては、商標法に「マドリッド協定の議定書に基づく特例」があります。前者の特例は、外国語(英語)による出願の容認とその外国語出願に優先権を付与するなど従来の法律とは枠組みの異なる条文です。後者の特例は、商標の国際登録出願等に関する事項です。
知的財産に関する処分とその対応
注:営業秘密は権利ではないが、営業上の被害者は不正競争行為の差止や損害賠償の請求ができる。窃盗等の刑法上の犯罪行為、民法上の不法行為は別に処罰される。米国では営業秘密について経済スパイ法による保護もある。