第 6講 知的財産権に関係する他の法律及び条約(4/5) PDF

細川 学(2006年08月) 

第4話 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)

TRIPSとはどんな協定ですか

第2章 一般協定及び基本原則
  1. 実施義務と最低基準の達成
  2. パリ条約超えた保護の強化
  3. 内国民待遇の拡大(差別の禁止)
  4. 最恵国待遇の即時かつ無制限の原則
  5. 国際的消尽の原則(ある国で市場に流通した商品については、その時点で権利者の保持する権利は消失し、他国において、その輸入差止はすることができない)
第3章 取得可能性、その範囲と種類に関する基準
  1. 特許の対象:新規性、進歩性及び産業上の利用可能性のある全ての技術分野の発明
  2. 特許権の内容:排他的権利の拡大(販売、譲渡、貸渡の申出)
  3. 発明の開示他:当業者が実施可能な開示、ベストモード及び情報提供の要求可能
  1. TRIPS協定(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights)は1994年4月にウルグアイにおいて調印され1995年1月に発効した協定で、「世界貿易機関を設立するマラケシュ協定=WTO設立協定」の付属書の一つとなっているものです。WTO(World Trade Organization:世界貿易機構)には現在140以上の国や地域が加盟しています。
  2. TRIPS協定は工業所有権に関するパリ条約、著作権に関するベルヌ条約、著作隣接権に関するローマ条約及び集積回路の知的財産権に関するIPIC条約(Treaty on Intellectual Property in respect of Integrated Circuits)における保護の範囲を強化することを目的としています。保護の強化のための最低基準を、先進国は1年、開発途上国は5年、後発開発国は11年以内にて達成することが定められています。特に紛争解決については、パリ条約では国際司法裁判所の判決にも法的拘束力がありませんでしたが、TRIPSでは条約締結国の集団による制裁措置の発動が可能になっています。なお、日本の関連法令はもともと強い保護が可能なものであるため、その部分的改正によりTRIPS協定への対応が行われています。
  3. TRIPS協定の主な内容は以下の通りです。

TRIPSにおける各権利の保護の原則

  1. 工業所有権:パリ条約に加えより高度の保護水準
  2. 集積回路:IPIC条約に加えより高度の保護水準
  3. 著作権:ベルヌ条約に加えより高度の保護水準
  4. コンピュータプログラム及びデータの編集物:「文学的著作物」として保護、データの編集物は著作権に加え知的創作物としても保護