技に夢を求めて(1/13)PDF

和田龍児

はじめに

筆者は現在、大阪府寝屋川市にある私立大学の工学部で教鞭をとる身であるが、これまでの人生の大半は工作機械技術屋として過ごしてきた。

この40年間、会社と周囲のご厚意についつい甘えてしまい勝手気まま、わがまま一杯に過ごさせていただいた。正に技術屋冥利に尽きると言うものだろう。ありがたく思うと同時に、多くの方々に多人のご迷惑をお掛けしてしまったと言う点ではいささか忸怩たる思いがある。これからは罪滅ぼしの意味からも、若い技術者の卵の養成に微力を尽くしたいと思っている。

そんな折に旧知のニユースダイジェスト社の小林茂さんから、この機会に長い技術者生活の締めくくりとして何かFA関連の連続エッセイのようなものをまとめて見てはどうか、とのお誘いがあった。テーマはとくに拘泥しないからとの大変にありがたいお話であった。

すぐにおだてに乗るのが筆者の悪い癖で、それではと言うことで二つ返事でお引き受けして見たものの、内容とメインタイトルをどうするかですっかり行き詰まってしまった。編集長の服部徳衛さんからもアドバイスを頂戴した。色々なタイトル案のご提案も戴き、随分と助け舟を出してもらったが、原稿の締め切りは近づくし気が気でない。「無題」ではいかにも投げやり的で無責任、味も素っけもない。最初の意気込みとは襄腹に気の重い日々が続いた。

そこで、エイつと勝手に決めたのが表題の「技に夢を求めて」である。これならばあまり内容が制限されずに済みそうである。

実を言うと『技に夢を求めて』とは、在職中に筆者が社史編集委員長としてまとめた豊田工機(株)50年史の表題である。無断転用でお叱りの誹りを受けるかも知れないが、あえてこの題目を使わせていただいた大きな理由は、技術者は決して夢を棄ててはならないとの自戒の意味を込めてのことである。

本書は、月刊・生産財マーケッティングで1997年4月号から12回にわたって連載したものをまとめたものです。